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ごみ処理施設の火災はなぜ起きる?数字で見る実態と、私たちができること

ごみ処理施設や収集車で相次ぐ火災について、消防庁・環境省の統計と実例を整理。リチウムイオン電池などの混入が大きな事故につながる理由と、家庭・事業所で守るべき分別方法を解説します。

基礎ガイド約9分

「小さな電池だから、不燃ごみに混ぜても大丈夫だろう」。その一度の判断が、ごみ処理施設の長期停止や数十億円規模の損害につながることがあります。近年、リチウムイオン電池などの混入による火災が、ごみ処理施設や収集車で相次いでいます。消防庁・環境省・自治体が公表した数字と事例から、その実態を見ていきます。

この記事の要点

  • 2025年に消防機関が把握した火災は、ごみ処理関連施設106件、塵芥車107件の合計213件
  • 環境省の調査では、2024年度に9,923件の出火が発生。発煙・発火まで含めると23,068件
  • 火災は、電池内蔵製品が収集車や破砕機で押し潰されることで起きやすい
  • 一度ごみの中に混ざると、施設側で見つけ出すことは難しい
  • 家庭では自治体の分別ルール、事業所では産業廃棄物として適切な処理方法を確認する

火災が起きるのは焼却炉だけではない

ごみ処理に伴う火災は、焼却炉へ入る前の工程でも発生します。

発生場所 主な危険
ごみ収集車 圧縮板で電池内蔵製品が押し潰される
受入ヤード 荷下ろしされたごみの中から発火する
破砕機 電池に強い衝撃が加わる
搬送コンベヤ 破砕後の電池片などが周囲へ着火する
ごみピット 大量の可燃ごみに燃え広がり、消火が難しくなる

不燃ごみや粗大ごみの処理施設で起きた火災が、電源設備や隣接する焼却施設にまで広がり、焼却炉が止まるケースもあります。

数字で見る火災の実態

消防機関が把握した火災:年間213件

消防庁が全国の消防機関から集計した、廃棄されたリチウムイオン電池等による火災件数です。

ごみ処理関連施設 塵芥車 合計
2022年 79件 82件 161件
2023年 71件 100件 171件
2024年 96件 84件 180件
2025年 106件 107件 213件

2022年から2025年までに、合計件数は161件から213件へ約32%増えました。この数字は、消防機関がリチウムイオン電池等による火災として把握した件数です。施設職員が消火した小規模な出火や、発煙だけで収まった事案は別に集計されています。

現場では年間2万件を超える発煙・発火

環境省の一般廃棄物処理実態調査では、市町村の処理工程で起きた火災事故等を次のように集計しています。

年度 職員・消防隊が消火した出火 発煙・発火等を含む全件
2022年度 4,260件
2023年度 8,543件 21,751件
2024年度 9,923件 23,068件

消防庁の213件は、消防機関が把握した施設・塵芥車の火災です。一方、環境省の23,068件には、発煙、自動消火設備の作動、職員による初期消火なども含まれます。数字の対象は異なりますが、ごみ処理の現場では消防出動に至らない発煙や発火も数多く起きています。

使用中のリチウムイオン電池火災も増加

廃棄物処理中の火災を除いた、モバイルバッテリーなどの製品火災も増えています。

火災件数
2022年 601件
2023年 739件
2024年 982件
2025年 1,297件

2025年の火災件数は、2022年の約2.2倍です。特にモバイルバッテリーは、2024年の290件から2025年には482件へ約7割増加しました。

なぜ小さな電池が大きな火災になるのか

収集・破砕時に強い力が加わる

リチウムイオン電池は、内部に大きなエネルギーを蓄えています。収集車の圧縮板や施設の破砕機で押し潰されると、内部短絡によって急激に温度が上昇することがあります。発火後に熱暴走を起こすと、周囲のプラスチックや紙類へ燃え広がります。

電池が入っていると気づきにくい

電池は、モバイルバッテリーだけに使われているわけではありません。ワイヤレスイヤホン、携帯扇風機、電子たばこ、電動歯ブラシ、コードレス掃除機、電動工具、おもちゃなどにも内蔵されています。外見から充電式製品と判断しにくい物や、電池を簡単に外せない製品も増えています。

ごみの中から火元を見つけられない

ごみピットには大量の可燃ごみが蓄積されています。火元が内部に埋もれると、煙が見えても正確な場所を特定できません。

川口市の朝日環境センターでは、2025年1月の火災後に約1.49トンのごみを調べました。原因は特定できませんでしたが、スプレー缶、中身の残ったライター、リチウムイオン電池、電子たばこなどが見つかっています。同市の事故報告書でも、危険物が一度ごみピットへ入ると、施設側で取り除くことは難しいとされています。

実際に発生した施設火災

自治体や一部事務組合から、次のような火災が公表されています。

発生日 施設・地域 発生場所・原因 主な影響
2024年10月17日 東淀工場・大阪府 ごみピット。投入直後に爆発が2回発生 クレーン等が故障し全炉停止
2024年12月9日 常総環境センター・茨城県 資源化施設。リチウムイオン電池の混入と推定 作業員1人を搬送。処理能力が低下
2024年12月27日 印西クリーンセンター・千葉県 ごみ処理施設 粗大・不燃ごみ処理が長期間停止
2025年1月3日 朝日環境センター・埼玉県 ごみピット。原因は特定できず 市全体の焼却能力の約6割を喪失
2025年5月4日 寝屋川市クリーンセンター・大阪府 破砕施設。電池からの発火と推定 消火活動は約35時間
2025年7月12日 蕨戸田衛生センター・埼玉県 粗大ごみ処理施設。原因不明 焼却施設等の電源設備も損傷
2025年9月4日 リサイクルプラザ藤沢・神奈川県 電池内蔵製品等からの出火と推定 全設備が電源喪失
2026年1月14日 南部クリーンセンター・京都府 選別資源化施設の粗大ごみピット 焼却施設も約1週間停止
2026年4月29日 クリーンおしま・北海道 ごみ焼却施設 燃やせるごみの受入れを停止

火災の負担は修理費だけではない

環境省資料では、2021年度に発生したリチウムイオン電池関連火災の被害総額を約96億~108億円と推計しています。

リサイクルプラザ藤沢では、2025年9月の火災から2026年7月までに約31.1億円が必要となりました。内訳は、設備の復旧に約23.4億円、市外への搬出・処理と仮置場の運営に約7.7億円です。

火災が起きると、設備の修理だけでなく、他自治体や民間施設への運搬・処理、仮置場の確保、ごみ収集ルートの変更なども必要になります。

家庭で確認したい捨て方

リチウムイオン電池や電池内蔵製品の排出方法は、自治体によって異なります。

  • 燃えるごみや容器包装プラスチックへ混ぜない
  • 「危険ごみ」「有害ごみ」「小型家電」など、自治体の区分を確認する
  • 無理に分解、穴開け、圧縮をしない
  • 端子の絶縁方法を自治体の案内で確認する
  • 膨張、変形、発熱、水濡れがある場合は自治体へ相談する
  • スプレー缶、ライター、花火なども指定方法で分別する

環境省も、家庭から出る電池や電池使用製品は、居住する市区町村のルールに従って排出するよう案内しています。

事業所では家庭ごみと分けて考える

環境省は、事業所や工場から出るリチウムイオン電池等について、他の廃棄物と分別し、処理可能な産業廃棄物処理業者へ委託するよう案内しています。

廃棄物処理法第3条でも、事業者は、事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任で適正に処理することが定められています。

  • 電池・充電式製品専用の保管場所を設ける
  • 燃えるごみや廃プラスチック類へ混入させない
  • 清掃担当者やテナントにも分別方法を共有する
  • 委託先が電池や電池内蔵製品を処理できるか確認する
  • 膨張・破損品の保管方法を委託先へ確認する

まとめ

ごみは、収集車へ積まれた瞬間に消えるわけではありません。収集、破砕、選別、焼却、資源化という工程を、処理施設や収集運搬事業者、自治体、消防など、多くの人が支えています。

一人の「これくらいなら大丈夫」という判断でも、施設停止や数十億円規模の損害につながります。小さな電池を正しく分けることは、地域の生活と、ごみ処理に携わる人たちの安全を守る行動です。捨て方に迷ったら、ごみに混ぜる前に自治体や処理業者へ確認してください。

排出前に確認すること

家庭から出す場合は市区町村の最新ルールを、事業所や工場から出す場合は契約している処理業者の受入条件を確認してください。

本記事は一般的な情報を整理したものです。廃棄物の区分や排出方法は、製品の材質、排出状況、自治体の一般廃棄物処理計画等によって異なる場合があります。